幼稚園・保育園のお便りを”やさしい日本語”へ ~日本語が苦手な保護者にも読まれる手紙の作り方~

幼稚園や保育園からは定期的にイベントや持ち物の手紙が配布されます。しかし、かしこまった表現の形式が多く、外国人の保護者にはわかりずらいことが多く、難しいと感じると読まれない場合や、誤解されていることもあります。この記事では、よくある手紙の内容を”やさしい日本語”へどのように変換するかを解説します。

元の文章

実際のお便りを例に、架空のお便りを作成しました。このページでは、このお便りを”やさしい日本語”にしていきます。
(変換後のお便りをすぐに確認する)

(お便りサンプル)
○○組 お楽しみ会のお知らせ

10/12に配布した手紙の通り、お楽しみ会を開催したいと思います。
親子で成長したことを喜ぶ時間を持ちたいと思いますのでご予定ください。

【日時】 11月15日 (水)
【流れ】
 9:00 子供登園
  ・朝の登園バスは通常通りです。
  ・朝の預かり保育も通常通りです。
 10:00 保護者会
  ・保護者の方は9:50までに集合してください
  ・園長先生からお話があります
 10:30 各教室に移動します
 10:40 親子で成長したことを共に喜びます
 11:00 おわりです
  ・帰りの登園バスはありません
  ・午後の預かり保育も通常通りです。
【保護者の持ち物】
  ・保護者の外靴を入れる袋と室内履き
  ・大きめ(A3サイズ)の紙袋 (子供の絵を持ち帰ります。)

情報を絞る

お便りで最も避けなければいけないのは、読んでもらえないことです。漢字や文字が多い資料というのは読む気が失せてしまうことも多いです。そこで、外国人向けの手紙には、情報を絞り必要最小限の内容のみを記載します。
文字数を減らし、「この量なら読もうかな?」と思ってもらうことが目的です。

今回の例の場合、保護者の集合時間や持ち物が重要な内容となるため、他の項目は削除します。

削除する項目:

「10/12に配布した手紙の通り」 
「10:00 園長先生より挨拶」
「10:30 教室に移動します」 

残す項目:

集合時間、持ち物、など

一文を短く

一文の中には、一つの情報提供に留めましょう。

修正前:「親子で成長したことを喜ぶ時間を持ちたいと思いますのでご予定ください。」
修正後:「こどもの成長(せいちょう)を喜(よろこ)びます。ぜひ、来(き)てください。」

単語を簡単な言葉に変換

敬語、漢字、擬音語・擬態語、カタカナ語は外国人にとっては難しいため、使わないようにしましょう。また、漢字にはふりがなをつけましょう。

保護者 → 親(おや)
登園 → とうえん (保育園(ほいくえん)にいくこと)
バスは通常通り → バスは あります。 or バスは いつも どおりです。
9:50までに集合してください → 9:50に 来(き)てください

表現方法

ふりがなとスペース

漢字には必ずふりがなを振りましょう。また、文節ごとにスペースがあるととても読みやすくなります。

修正前:親子でこどもの成長を喜びます。ぜひ、来てください。
修正後:親子おやこで こどもの 成長せいちょうよろこびます。ぜひ、て ください。

日付

日本ではよく「10月12日」を「10/12」と書くことがありますが、国によっては12月10日と認識されてしまいます。そのため、明確に「月」「日」を書くようにしましょう

修正前: 10/12
修正後: 10月(がつ) 12日(にち)
 ※ただし、この記事では情報を絞って記載しているため、修正後のお便りには日付の記載は無し

時間

日本では24時間制で書くことがありますが、海外では一般的でない地域もあります。そのため、12時間制で記載し、かつ、時間の前に必ず「あさ」「ひる」「よる」を加えましょう。
 例: 14時 → ひる2時(じ)

図や表を作る

外国人の方にとって日本語の漢字はとても難しく感じます。文章で表すのではなく、なるべく図や表を作るようにしましょう。

表や絵にする1

修正前:

 9:00 子供登園
  ・朝の登園バスは通常通りです。
  ・朝の預かり保育も通常通りです。
 11:00 おわりです
  ・帰りの登園バスはありません
  ・午後の預かり保育も通常通りです。

修正後:

表や絵にする2

修正前:

【保護者の持ち物】
  ・保護者の外靴を入れる袋と室内履き
  ・大きめ(A3サイズ)の紙袋 (子供の絵を持ち帰ります。)

修正後:

変換後のお便り

全文変換後のお便りがこちらです。 もとの文章を確認する

(やさしい日本語版)
○○組 お楽(たの)しみ会(かい)をします

親子(おやこ)で こどもの 成長(せいちょう)を 喜(よろこ)びます。ぜひ、来(き)て ください。

【いつ?】 11月(がつ)15日(にち) (すいようび)
【よてい】
 こどもは いつもと おなじ じかんに きてください。
 9:50
  おやは ようちえんに きてください。
  先生(せんせい)と 親(おや)で はなしを します。
 10:40
  親子(おやこ)で 成長(せいちょう)したことを 一緒(いっしょ)に 喜(よろこ)びます
 11:00
  おわりです

【バスと 預(あず)かり 保育(ほいく)】

【おやの もちもの】

集合時間、簡単な内容、持ち物の情報を残し、残りの情報は削除しています。もちろん、正解の形はありませんので、保護者の日本語レベルや園の環境に合わせた内容にするようにしましょう。

まとめ

以上、幼稚園・保育園のお便りをやさしい日本語にする方法となります。

①情報を絞る
②一文を短く
③単語を簡単に
④表現方法を変える

”ことのば”の研修

幼稚園・保育園の先生向けの研修を提供しています。それぞれの園の状況を確認し、園の状況に合った研修内容にします。
・やさしい日本語を用いたお便りの書き方
・外国人にとって難しい日本語の調べ方
・やさしい日本語を用いたお迎え時の子供の様子の伝え方
など、ご要望に応じた研修内容にカスタマイズ可能です。

また、文章や掲示物、アナウンスをやさしい日本語に変換するサービスも提供しています。
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(*日本語能力試験とは、外国人向けの日本語の試験となります。詳細は公式サイトを参照ください。)

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