【人事必読!】 法人向け日本語研修を決める4要素とは? 講師や費用についてまとめ

需要急増中の日本語研修

2023年10月末現在、日本国内で働いている外国人は、204万人に上ります(出典:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ[令和5年10月末現在])。前年の調査に比べ約23万人も増加しています。それに伴い需要が急増している日本語研修について、研修を依頼する際に確認すべき4要素をまとめました。外国人従業員を雇用している、あるいは雇用する予定の企業で人事を担当されている方は、ぜひチェックしてみてください。

講師

資格

まず必ず確認してほしいポイントは、講師が「日本語教育能力検定試験」の資格を持っているかどうかです(24年4月から国家資格「登録日本語教員」に移行予定です)。この資格保有者は、文法や音声といった基本だけでなく、日本語教育をする上で必要な様々な知識を持っています。

「日本語教育能力検定試験」の資格保有者が持っている知識

  • 文法 : 動詞の活用方法、助動詞・助詞の働きなど
  • 音声・発音 : 舌の位置、発音記号、アクセント規則など
  • コースデザイン : 学習者情報を集め、最適な授業内容の決定など
  • 評価方法 : テストの作成、テストによらない評価方法の決定など
  • 誤用訂正 : 学習者が誤った日本語を使用した時の訂正方法など
  • 他言語(英語や中国語など)との違い : 各言語と日本語との相違点など
  • 異文化間教育方法 : 異文化との接触による心理や異文化トレーニングなど

なぜ資格が必要か

(外国人が通う)日本語学校で使用する単語と、日本の「国語」で使用する単語は異なります。例えば「国語」の授業では”5段活用”や”形容動詞”という単語を使用しますが、日本語学校では使用しません。「日本語教育能力検定試験」の資格保有者であれば、日本語学校で使用するこのような単語を含めあらゆる知識を保有しているため、日本語学校と同様な指導をすることが可能です。しかし、資格の無い方はこのような知識が乏しく日本語学習者が知らない単語などを使用してしまうため、日本語学習者の混乱を招く恐れがあります。

日本の「国語」授業で
使用する単語
(外国人が通う)日本語学校で
使用する単語
5段活用Ⅰグループ
上(下)一段活用Ⅱグループ
形容詞イ形容詞
形容動詞ナ形容詞
表:使用する単語の違い

ビジネス経験

日本語指導経験だけでなく、社会人経験も重要な要素です。日本語学校で学習する日本語は一般的な生活場面を想定しており、ビジネス日本語やビジネスマナーは学ばないことが多いです。しかし企業で研修する際には、実際のビジネスシーンを想定して指導することが重要です。

ビジネス特有の研修項目の例

ビジネス日本語:打ち合わせ、プレゼンテーション、社内外の人との話し方、報連相(ホウ・レン・ソウ)
ビジネスマナー:名刺交換、席次(上座・下座)、断り方

担任制

研修を提供する企業によっては、レッスンごとに講師が変わる可能性があります。苦手な項目は、学習者の出身国や個人により異なるため、一貫してサポートして弱点を克服することが学習者の自信につながります。また、評価の観点でも、同じ講師が全ての研修を通して担当することで、適切に達成度を評価することが可能となります。

指導方針

指導方法

多くの日本語学校では、文法ごとに授業を組み立てる文法積み上げ型(文法シラバス)の教育をしています。しかし、実際の社会では文法の正しさではなく、業務・課題を達成できるか、ということが重要です。コミュニケーションを重視した課題達成型(課題シラバス/タスクシラバス)の研修が法人にはおすすめです。

シラバス達成したい目標の例メリットデメリット
文法シラバス“話します”を”話して”と活用する形を覚える。使用例:話します → 話してください・正確な文法を学べる・暗記中心となり、実際に使用するには更に練習が必要
・教師中心の授業になりがち
課題シラバス打ち合わせの依頼ができる。・自分の言葉で課題を達成する力をつけられる
・学習者中心の授業になる
・正確な文法知識がつきにくい
表:シラバスの違い

キャリアを見据えた指導

現在の業務内容のみに関連した日本語学習に固執せず、学習者のキャリアを見据えた学習内容にすることをおすすめします。キャリアアップを意識することで学習者のモチベーションアップにつながります。

教材

企業によっては独自の教材が用意され、決められた内容を中心に学ぶ場合があります。しかし、使用する言葉などは企業や業種により異なります。したがって、学習すべき内容もそれにあわせて変える必要があります。企業側で教材を選定する場合には、省庁が作成した教材や業種ごとに特化した教材が既に多数存在しているので、それらを参考にしてください。講師に教材の選定も依頼する場合には、自社の業務や業種に即した内容であるか、必ず確認してください。

業種に特化した教材例

介護業:例)『はじめて学ぶ介護の日本語 生活知識とコミュニケーション』(スリーエーネットワーク)
製造業:例)『ゲンバの日本語 基礎編 働く外国人のための日本語コミュニケーション』(スリーエーネットワーク)
コンビニ業:例)『コンビニの日本語』(アスク出版)
建設業、農業他:例)外国人技能実習機構 日本語教育教材

教材例:”外国人技能実習機構 日本語教材 建設関係職種 ベトナム語” 抜粋

研修費用

研修を受ける企業ごとに、社員に受講させたい内容は異なります。しかし実際は、研修内容も費用も既に決まっている「コース」を提供している場合が多いです。「コース」を提供するのではなく、依頼主の予算内で柔軟に対応できる研修提供者も存在するので、見積り時には下記項目を提示して依頼しましょう。

見積り依頼時に提示すべき項目
  • 研修予算
  • 社員(学習者)に到達して欲しい目標
  • 社員(学習者)の現在の日本語レベル
  • 研修参加人数
  • 研修場所(社内の会議室を提供可能か、など)
  • 研修期間

おまけ:日本人従業員も研修が必要!

日本語学習者だけが研修を受けるのではなく、一緒に働く日本人従業員も日本人向けの研修を受けることで、より一層、社内のコミュニケーションを向上させることができます。

異文化理解研修

日本は世界一のハイコンテクスト文化の国となります。ハイコンテクストの文化では知識があることが前提となっており、時に曖昧な表現が多くなります。異文化理解研修では、異文化体験や異文化理解だけでなく、明確で誤解を招かない言い方を学ぶことができます。

曖昧な表現の例
曖昧な表現明確な表現Point
できるだけ早く明日の17時までに人によって解釈が異なる。具体的な日・時間を伝える。
時間があったら○○の仕事の後にやってください。人によって解釈が異なる。優先順位を明確にする。
日程がタイト納期がいつもよりも短い。外来語は個人や文化によって意味や解釈が異なる。日本語を使用する。
適宜ホウレンソウをしてください毎週月曜日と水曜日の朝10時に、状況を教えてください。「適宜」はとても難しい単語であり、かつ、曖昧な表現。具体的に指示する。

やさしい日本語研修

日本に住む外国人の84%が”やさしい日本語”での情報発信を希望しています(出典:東京都多文化共生ポータルサイト)。
普段のコミュニケーションだけでなく、緊急時の資料等、あらゆる場面で必要とされています。この”やさしい日本語”を、外国人が所属する部署だけでなく全社的に学び使用することで、日本語や英語が苦手な人でも働きやすい職場を作ることができます。

やさしい日本語の例
通常の日本語やさしい日本語Point
面談しましょう会って話しましょう熟語は避けましょう
現金しか使えません現金だけ使えます(カードはだめです)“~しか”は混乱を招きます
この研修は受けないわけにはいきませんこの研修は必ず受けます二重否定は避けましょう
高台に避難してください高いところに逃げてください熟語は避けましょう

日本人向け研修も日本語講師が実施するのがベスト

日本人向け研修(異文化理解研修、やさしい日本語研修)も日本語研修の講師が併せて実施することで、次のようなメリットがあります。

  • 日本語学習者と日本人社員が一緒に同じ研修を受講できます。
    • 異文化理解研修を一緒に受講すると、日本人社員だけの研修では出ない意見や発想を聞くことができ、異文化理解に関する知識を得るだけでなく、様々な考え方に触れることができます。
    • やさしい日本語研修を一緒に受講すると、日本人社員が作成した”やさしい日本語”を日本語学習者に見てもらうことにより、感想を聞くことができます。どのような文章が伝わりやすいかを即座に知り、より充実した研修にすることができます。
  • 一緒に同じ研修に参加することで、日本語学習者と日本人社員との交流が深まります。

最後に

いかがでしたでしょうか。普段何気なく使用している日本語ですが、日本語研修をするためには専門的な知識が必要です。日本語研修を依頼する際は、本記事の各項目を確認しながら依頼先を決めましょう。この記事が皆さんの参考になりましたら幸いです。

“ことのば”の研修制度

“ことのば”では法人・企業向けに特化した研修を提供しています。費用や研修内容についても、各企業の予算や要望に合わせて、柔軟に対応することが可能です。
まずはお気軽に、お問い合わせください。

ことのば“の研修内容

講師日本語教育能力検定試験 合格
日本語教師養成講座420時間 修了
文部科学省後援 「ビジネス実務マナー技能検定 2級」取得
文化庁「就労者に対する日本語教師初任者研修」修了
経験製造業で10年以上の実務経験
日本語教室を運営
1年以上の留学経験あり
指導方法一人の講師がコースを通して担当
課題シラバスを採用
研修前に学習者にキャリアについてヒアリングを実施し、コース作成
教材企業や業態、業種ごとに最適な教材を選定
(オリジナル教材の作成も可能)
対応レベル初心者~上級
学習者の国籍不問
日本人向け研修対応可能な研修
 異文化理解研修
 やさしい日本語研修
費用各企業の予算や要望に合わせ、柔軟に対応